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2024/04/05 13:07

今年は桜の開花が例年よりだいぶ遅い東京・中目黒。関東近圏の皆様、本格的なお花見は今週末からでしょうかね?


さて、そんなナカメからもほど近い渋谷のシアター・イメージフォーラムにて3/30(土)~全国順次公開となったアイスランド映画『ゴッドランド / GODLAND』。こちら、第96回・米アカデミー賞の国際長編映画賞アイスランド代表作品で、各国でロングランヒットを記録している話題の一作。



今回、僭越ながら同国を撮り続けているイチフォトグラファーとして公式Webにコメントを寄せさせて頂きました。

同国&北欧ズキの皆様はすでに鑑賞された方もいらっしゃるかもですが、シバノも3月に試写会で鑑賞させて頂きまして、公開後という事で少し深掘りした感想や現地での撮影中エピソードも織り交ぜて作品を御紹介させてください(ネタバレ控えめ)。



まず、物語の舞台はデンマーク統治下の19世紀後半のアイスランド。デンマーク人牧師のルーカスが、布教のために辺境の村へ教会を建てる旅に出る。


もちろん時代的に車もなく、整備された道もなく移動は馬と徒歩。そして、ルーカスは「写真家」としての一面も持ち、ダゲレオタイプの巨大なカメラを一式背負って、厳しい大自然のなか旅を続けていく…。



約143分の上映時間中、困難な旅の様子がじっくり丁寧に描かれるのですが、ここまでの設定だけでも同じ異国(日本)からアイスランドへ旅をして、同国で写真を撮る者として自らの実体験からイメージしても、想像を絶するハードな場面が続き「無事に目的地へ辿り着けるんだろうか…?」と否応なしに興味と不安がかきたてられます。



そして、物語の後半は想像の斜め上をいく展開が待ち受けてまして…、鑑賞後の私の感想を端的にまとめたコメントが

「同国で撮影中、向き合うのは大自然と圧倒的な孤独だ。異国から来た牧師が旅の先に見たのは何だったのか?反芻が止まない。」

公式Webに寄せさせて頂いたこちらのコメントになるのですが、特に"牧師が旅の先に見たのは何だったのか?"…こうしてBlogを書いていても、その答えが気になって仕方ありません。



この映画、全編通してルーカスが写真を撮り続けるので、「被写体を見つめる、切り取る」という行為そのものにフォーカスしてる場面が多く、また、画面の比率も彼が撮っている写真そのものを意識させるような独特なサイズ感で、「写真」が物語としてもギミックとしてとても上質な形で使われてます。

私事で恐縮ですが、映画の舞台にもなっている同国南東部にて、オーロラ撮影のために夜通し原野の中で一人で撮影をしていると、ふと「我にかえる瞬間」があって、真の闇に包まれた空間に一人佇んでる様を俯瞰で想像すると「時に恐怖すら感じる圧倒的な孤独」を前に不思議と凛とした気分になるんですね。



普段、東京に暮らしていると人波や乱立している建造物で良くも悪くも誤魔化している「孤独」が、アイスランドに行くと可視化されるような…。そこまで孤立した状態になる事で、日常でどれだけ自分が色々な人やモノに助けられて生きてるかを切に実感出来るというか。

もちろん、そこで実感する事はキレイごとばかりでは無く、自らの醜さとか愚かさみたいなモノもあらためてリアルに感じる部分もあるのですが、主人公・ルーカスも…ラストにもしかしたらそんなモノと対峙する事になったのかもしれません。



と、言うわけでそんな「圧倒的な孤独」とアイスランドのワイルドな大自然を堪能&追体験出来る稀有な一作。ぜひ、皆様も牧師ルーカスが最後に視線の先に捉えたモノを、外界と隔絶された映画館という極上の鑑賞空間で見届けて頂きたい。


作品の詳細や、今後の上映情報はこちらのリンクからどうそ!

P.S. 
監督・脚本のフリーヌル・パルマソン作品は以前『ホワイト、ホワイト・デイ』を北欧映画祭(TNLF)で鑑賞させて頂いた。あちらは現代劇だがやはり「孤独」についての映画だった。社会派の名作が多い北欧諸国の映画の中でも、やはりロケーションが影響するのかアイスランド映画は氏の作品に限らず際立って「孤独」や「孤立」、「隔絶」を描かれる事が多いように思う。そして、その中に生きる人の小さな幸せの行方。そんな作品群の中でも『ゴッドランド』は格別に辛口な逸品。これから暖かくなる新年度だからこそ、ピリっと身が引き締まる一本をおススメしたい♪(シバ)

※今回、Blogに使用させて頂いた映画のスチールは配給会社の担当者様からご提供頂きました。