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2025/06/19 17:14
皆様、まだ梅雨の最中のはずなのに…東京では早々と真夏のような陽射しが降り注ぎ始めておりますが、まめな水分補給で熱中症などお気をつけくださいませ。
さて、そんな悩ましい暑さにみまわれる中、涼し気な極北の島国アイスランドから映画のお便りが届きました。
作品は6/20(金)Bunkamura ル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーとなる映画『突然、君がいなくなって』。

監督は、これまで3作の長編で数々の国際映画祭の賞や招待を受け、短編映画『The Last Farm』でアカデミー賞にノミネートされるなど、世界的に注目を浴びる俊英"ルーナ・ルーナソン"。
今回、長年のアイスランド取材のご縁で当映画のパンフレット内コメントや、試写会でのアフタートークに登壇させて頂きまして、当Blogでも映画の鑑賞の+αになるようなネタバレ少な目レビューと、試写会の様子を少しレポートいたします♪

去る6/10に開催された試写会では、アフタートークに映画監督・写真家の "枝優花"さんと登壇させて頂きました。
枝さんの映像作家視点でのコメントは、カットの切り方やアングルによる効果、そこから読み取れる主人公達の心情など、イチ映画ズキとして非常に参考になるお話で聞き入ってしまいました。
また、キャスティングの妙についても女性ならではの視点(あまりこういう表現は今風では無いと思いますが…)で、事前に試写会の時に感じていた"違和感"が個人的にも解消されて◎でした♪

一方、シバノはアイスランド現地を知るフォトグラファーとしてお声がけ頂いたので、フィルムには映らないアイスランドの土地柄や首都レイキャヴィクの規模感、また現地の若者達の間で"音楽"が大事にされてきた背景やライフスタイル等、カルチャー面についてもお話させて頂いた次第です。
と言うわけで、ここからはお借りした劇中スチールと、シバノが撮り下ろした現地写真を交えて、当Blogでも"写真で巡る『突然、君がいなくなって』"と題して、首都レイキャヴィクを中心にご紹介します。
鑑賞前の皆様はアイスランドの予備知識として、鑑賞後の方は撮影されたロケーションを知る事でより深く作品を楽しんで頂けたら♪

まずは冒頭、主人公ウナ(右)と恋人のディッディがデートするシーンから。こちら、首都レイキャヴィクの西側の海岸エリアでロケされてるようでした。ダウンタウンから少々離れている事もあって、とても静かな一帯です。

劇中のシーンと似たような雰囲気の写真があったので一枚。砂浜ではなく、テトラポッド代わり?の岩で護岸されてます。

対岸にはアイスランドらしい山なみも臨め、街中にいながら同国が自然に囲まれてる事を感じられる場所でもありますね。右手に見える港湾部も、意外なお店があったりと少しダウンタウンとは違った街歩きが出来る個人的オススメエリア。

そして"ある出来事"が起きた後、劇中に登場するコンベンションセンター"Harpa”。こちら、ダウンタウンのレイキャヴィク港沿いに2011年に竣工。劇中では、緊急支援センターとして描かれています。

こちらがHarpaの全景。実際には、シバノが長年取材を続けたアイスランド最大の音楽フェス"Iceland Airwaves"のメイン会場や、クラシックのコンサート、その他、国際的な会議等でも利用されてます。

"Harpa"での”オーラヴル・アルナルズ"のスペシャル・コンサートの様子。こちらは館内で一番規模感のあるホールですが、これ以外にも大小のハコがあり、フェス中は様々なジャンルやスタイルのライブパフォーマンスが同時開催されました。
竣工当時はレイキャヴィクの街中にはこんなスタイリッシュな建築は無かったので地元の人達からは「浮いてる」なんて声もありましたが、時間を経てすっかり首都を代表するランドマークの一つとして馴染んだのではないかと。

お次は…若者たち中心で描かれている本作の中では貴重なワンシーン、主人公ウナと父親が名物ホットドッグを食べるシークエンス。さりげない会話が展開しますが、このやりとりがあるからこそ、この後の若者たちの葛藤がよりハイライトされるような…個人的には印象に残りましたね。

ホットドッグのシーンは市民の憩いの場になっている"チョルトニン”湖がロケ地。こちら、湖畔に市庁舎もありアイスランド映画を観ると定番のロケ場所として頻出する人気のスポットでもあります。↑写真左は"フリキルキャ"という教会。劇中でも父親の肩越しにその姿が見えますね♪

教会は音楽フェスの名会場としても長らく地元のミュージシャン達から愛されてきました。こちらは、来日経験も多い"múm"のスペシャルライブから。2階を見ると席ではない場所にもオーディエンスが押し寄せてるのが確認出来るかと。

それから"チョルトニン湖"はダウンタウンにありながら、夜ともなれば湖畔や国内線の空港、そして港と暗めな空が広がるので気軽なオーロラ観測にはオススメのスポット。写真は、湖畔に建つ市庁舎(右)越し、海上に出現したオーロラ。レイキャヴィクは首都にいながらにして見事なオーロラを観測出来る世界的に見ても貴重な環境の街。観光で滞在される際は、ぜひこちらの湖畔をチェックしてください♪

こちらは先ほどご紹介した"Harpa”(左奥)からほど近いホットドッグ・スタンド。ビル・クリントン前米大統領がわざわざ車を停めて買いに来た事でも知られ、それが由来で"クリントン・ホットドッグ"という愛称で呼ばれてました。

せっかくなのでホットドッグ近影。ラム肉のソーセージが使われていて、独特な甘みのあるソースが決め手。外食は高コストなので、以前の音楽フェスツアーに参加した大学生君は、連日こちらのホットドッグにお世話になっていました♪ 現地を訪れたら是非食べ歩きしたい一品です!

劇中に登場するランドマークをもう一か所ご紹介。こちら、丘の上に建つ"ハットルグリムス教会"で、ダウンタウンの中心街に位置する為、教会を目印に街歩きすると初めて観光で訪れた際に、とても歩きやすい。

"ハットルグリムス教会"に併設の展望台に登ると、レイキャヴィク市内が360°一望出来ます。写真は、ダウンタウンの一番賑やかなエリアを写した一枚。映画『突然、君がいなくなって』の主要なロケ地がこの一枚の中に多数入ってますね♪

前半、何度か劇中に登場したバーのシーン。主要なバーやレストランは先ほど展望台から見たダウンタウンの中心街に集中しているので、首都の観光に訪れた方は必ずこんな若者達の姿に出会うと思います。

以前の音楽フェスでは"ハットルグリムス教会"もスペシャル会場の一つになった事がありました。写真は、鬼才ヴァルゲイル・シグルドソン率いるレーベル"Bedroom Community"に所属するアーティスト達が次々とパフォーマンスした"Bedroom Community Night"での一枚。

ここまでに"Harpa"や、"ハットルグリムス教会"でのライブ写真をご紹介してきましたが、実際にはダウンタウンのライブハウスをはじめ、バーやレコードショップ、バーやカフェ、そしてギャラリーやホテルのラウンジなど…音楽フェス"Airwaves"中、最盛期は昼~深夜まで見きれないほど多数のライブがパフォーマンスされました。写真はインスト・バンド "For a Minor Reflecton"。中心街でのライブは、激しめなロックやパンクバンドも比較的多めでしたね。

長い冬を持つアイスランドで、室内で楽しめる趣味として音楽は環境的にとても親和性が高い。少ない国民数にも関わらず、音楽を志す若者達が続く一因にもなっている。写真は、アメリカでブレイクした"of Monsters and Men"。

国際的に活躍する"ビョーク"や"シガー・ロス"をはじめ、若手のアーティストがアメリカや日本の音楽ズキに支持されるケースも珍しくない。その一人が、映画『突然、君がいなくなって』で主演を務める"エリーン・ハットル"。彼女は音楽活動でも高く評価されており、2025年の"Airwaves”にも出演予定。

さて映画の中では、"Harpa”~ダウンタウンのメイン通りにあるバー~"ハットルグリムス教会"と、主人公達が移動していく様子が描かれてましたが、実際に男性の足だと街並みを見ながらでも30分前後あれば歩ける距離感。写真は、主人公達が道行く大人と少し口論するシーンが描かれたエリアで、ハットルグリムス教会からもほど近い。

実はこのエリア、半外飼いになっているネコちゃん達と遭遇率高めでして、過去の取材では音楽フェスや自然のエリア撮影の合間をみて、よく"ネコ写"をしにウロウロしておりました。ちなみに、同国の映画『たちあがる女』でも、このあたりを移動する様子が印象的に映し出されます。

そして、物語の後半は西レイキャヴィクの雰囲気が漂うエリアがロケーションとして描かれます。このあたりは一言で言うと"高級住宅街。なので「ウナの友人の両親は裕福なんだな」とかちょっと変な色眼鏡をかけて見てたりもしたんですが…、意図的なモノかは分かりませんが、比較的長めに尺がとられた一連のシークエンスからは、現地の若者達のライフスタイルがとても伝わってきました。
というのもアイスランドは酒税が高く、バー何杯も飲むと若者の懐事情には結構厳しいんですね。なので、早い時間には誰からのウチで飲んでから夜遅めにバーに繰り出すようなスタイルが珍しくなく、彼らにとっては一般的な過ごし方なんだと思って観て頂くと、なぜこのロケーションなのかも説得力が増すのではないかと。

ちなみに、過去の取材実績を振り返っても、著名なミュージシャンや監督、画家等のインタビュー撮影はだいたいこの"西レイキャヴィク"エリアのお宅に伺う機会が多かったですね♪

そして物語は最後半へ。主人公ウナ(愛人)とクララ(今カノ)、恋人のディッディに残された二人が静かに対峙しながらも寄り添う緊張感に満ちたシーンへ。映画の冒頭に戻るように、西レイキャヴィクから海岸線へと向かいます(劇中ではLUUPに乗ってますが、徒歩でも行ける距離)。

どんなエンディングを迎えるかは、ぜひ皆様の目で確かめて頂くとして…ラストシーンに関連するロケーションをもう一つご紹介。首都レイキャヴィクの西端にある灯台"グロッタ”。こちら、ダウンタウンから西レイキャヴィクの海岸に出たあたりから、徒歩で30分強。
このあたりは夜間はかなり暗くなるので、街中から行けるオーロラ観測スポットとしてオススメ。渡氷を検討されてる方は…是非チェックを♪

さて、今回は映画『突然、君がいなくなって』の劇中スチールと共に、主人公達の足取りを追うように現地で撮り下ろした写真で首都レイキャヴィクの様子をご紹介しました。
こちらの作品、ダウンタウンの主要エリア中心に展開するので、アイスランドらしい自然の風景はあまり劇中では映し出されませんが、首都レイキャヴィクは中心から車で約30分も走れば↑荒々しく荘厳な大自然に囲まれた街です。

北海道と四国を足した大きさの島口に、2025現在は約39万人の国民数を数える極北の小国。そんなフィルムの外側にある土地感をイメージして映画を鑑賞頂くと、同じ島国でも人の溢れた日本とは比べられないくらい…彼らの出会いがより貴重な縁である事を感じられるのではないかと。

最後に、映画を鑑賞された方なら必ず耳に…そして心に残るはずなのが劇中で大変印象的に使われる楽曲『Odi et Amo』。作曲はアカデミー賞を受賞した『博士と彼女のセオリー』や、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『メッセージ』等でも国際的に知られるアイスランド出身のアーティスト "ヨハン・ヨハンソン"。
実は私、音楽フェスの取材を通して2011年にヨハンのインタビューと、ライブ(↑写真)を撮影する機会に恵まれまして、その時にパフォーマンスされたのが『Od et Amo』でした。

『Odi et Amo』は日本語訳で『割れ憎み、且つ愛す』という意味。主人公ウナと、クララ…二人の心情に寄り添うようなタイトルで、その意味を噛みしめて音楽に耳を傾けると、より深く登場人物達の心境に浸れるのではないかと。
作曲したヨハン(↑写真)は残念ながら2018年に逝去。しかし、彼の残した名曲は新作のアイスランド映画の中でも生き続けてます。

さて、撮りおろしの写真を添えてご紹介したアイスランド映画『突然、君がいなくなって』、いよいよ6/20(金)から渋谷 Bunkamura ル・シネマ、新宿武蔵野館他で順次全国ロードショー。
↑こちらの画像は今回シバノがパンフレット用に寄せさせて頂いたコメントです。ぜひ皆様、作品のラストをどう見るか、受けとめるか…繊細で美しい映像と、ヨハンの楽曲に包まれる劇場でご覧ください!
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作品の詳細や、上映情報はこちらを参照ください♪
※今回Blogで掲載した劇中のスチール写真は、配給会社の方から御提供頂きました。ありがとう御座います。